2009年4月6日月曜日

Academic Speaking 2009にて良い学びをどう提供するか?

春学期開講まで後4日。

ICU ELPのAcademic Speakingを教えるのは3回目、Coordinatorを務めるのは2回目。毎年学生には人気の高いクラスで、過去にやったことをそのまま再度やっても問題はないが、まだまだ向上させたい部分はたくさんある。

この記事はASPの概略と今年の計画である。シラバス・授業進行など、全て英語でやる授業だが、敢えて日本語で書き出すことによって違う視点が出てくることを期待する。学生に渡す英語の実際のシラバスは左記リンクのような感じである。もっとFriendlyなフォーマットを考慮中。

授業名:Academic Speaking (通称ASP)

対象:ICUの一年生、A,Bの学生(Cは免除)
    プログラムAは旧TOEFL平均450点、Bは平均500点、Cは550点
    A,Bの中でも英語で話す力は人それぞれ様々

授業数:一回70分、週二回、春学期で全18回
人数: 1クラス約20人、自分はBを2クラス担当の予定

環境:
ICUの一年生は春学期はASP以外にWriting 3, Reading 2, Listening 1, Learning Strategies 1, Content Lecture 1(授業名は全て簡略)と合わせて週に10回の英語の授業がある。WritingとReadingのクラスが一番宿題などで重い。どのクラスでも英語の話し合いはあるが、英語で話すためのスキルを取り扱うのはASPだけ。ASPは一回の授業の準備時間が平均して60分ぐらいが目処とされている。

目標:
ELPで定めたASPの目標は簡単にいうと「ICUのような大学英語環境で機能していくために必用な英語のスピーキング力を身に付ける」となる。最も強調する「機能」はDiscussion Skills。つまり、Discussionにおいて意見の説明(簡単なプレゼン)・質問・議論できること、そして会議の進行、まとめ、内容の発表ができること。それから書いた文章、発表した内容について他の学生とフィードバックが交換できること。そして講師とアポをとり、オフィスに行って相談が英語でできること。
そしてもっと根本的に
1)上手な人の交流や異文化交流の基本って何?
2)英語で交流する力ってどう身に付ける?弱みを克服する上手な持続可能な練習方法は?
おおまかな目標はこれで良いかなと思ってます。特に最後の二つは去年から私とCoordinatorを共に務める二人と話し合って追加して重要だと思っている。

規定のテキスト:Communicating on Campus 大きく、重く、学生用のCDやDVDが付いていなくてちょっと不便。でも内容はしっかりしている。著者はICU講師。来年あたりから使わない予定?
(吉田さんの「会議の技法」など、日本語でも知識をつけて欲しい)

学生:ASPに取り組む学生のやる気は強い。受験英語を主にやってきて話す能力がバランス良く鍛えられていない学生が多い。英語はたくさん勉強してきているのに、話すとなると思うように言いたいことが出てこない。でも話す力をしっかり付けて将来につなげたい。という学生が多いと思う。中には軽い日常会話、そしてスピーチ・話し合い・討論は高校で多少したことあるが、大学で扱うような課題を英語で議論した経験はない、もしくはまだその能力は自分で足りないと思っている。多くの学生は留学生と英語で話したい、ICUの英語の講義に参加したい、留学したいなどの希望をもっている。

今学期の授業計画(18回)
  1. 雰囲気作りと目標設定:アイス・ブレーキングや自己紹介で英語で話す不安を減少させる。お互いにどんなスピーキングの練習を今までしてきたか、そして将来英語を何のために使いたいか、グループ内でアンケートし、それぞれの目標設定を話し合う。

  2. Interactive Strategies/Controlling a conversation:限られた英語力でどう英語の交流を上手にするか、様々な「会話コントロール」の策・技法に迫る。繰り返しを求めたり、相手に止まってもらったり、待ってもらったり、他の人に振ったり、質問したり、助けを求めたり、知らない単語を言い換えたり、例を挙げたり、話題を変えたり、策は様々。その有用フレーズをロールプレーで鍛える。「交流の技法のチェック・リスト」みたいなものも作って欲しい。様々な個人製リストや振り返りが入るReflectionノートかBlogがあると良いのかも(要検討)。

  3. Leading a Discussion:良いDiscussion・会議とは?という質問に答えられるようにする。できれば講師と学生が共にチェック・リストを作成する。進行役(Facilitator)と参加者の機能を考える。短いロールプレー的な会議で進行役を一人づつ務めて練習し、グループのメンバーからフィードバックを貰う。

  4. Participating in a Discussion: 参加者としての責任を考え(チェック・リスト、機能的な表現を学ぶ。意見を表現したり、問題提起したり、同意したり、補足したり、反対したり、掘り下げたり、つっこんだり、発展させたり、話題を戻したり、など。

  5. Introduction to ASP Assessment No.1: この授業では翌週に行われるVideo Recordingとその自己分析・振り返りの方法を説明し、Recordingに向けたDiscussionの練習もする。この紹介のクラスも含む、Recordingには以下の通り2時間もかけているので自分が英語で人と交流する姿を記録に残して、自分で分析して、目標を定めて、向上したいところを意識して、これから一年間続くELPの授業の中で上達していくその意義を良く理解して欲しい。もう一つ重要なのは、Recordingはテストではないということ。あくまで具体的な振り返りと目標設定のプロセスを促すため。去年のAudio RecordingによるSelf-Assessmentについての実践報告はこちらから。

  6. Recording Day 学生が3人一組で講師のオフィスに入り、その場で与えられたトピックに対して一人づつ1~2分Opinionを話し、更に2分程そのTopicのDiscussionをFacilitateし、それをWebCameraで録画して学生のUSBメモリーに保存する。退室後、学生はそのVideoファイルをComputer Labなどで三人で見て、Peer Reviewを行い、Discussion leader、participantとしてverbal/non-verbalな面で良くできたこと、できなかったことを話し合う。
    更に、各自個人の宿題としてopinionの1~2分の部分をTranscribeし、自分の論理的展開、表現の正確性などを分析する。最後に総合的に見て自分のVerbal improvement goals, non-verbal improvement goalsそしてそれぞれのPractice planを考え、書き出して8回目のクラスに持参する。

  7. Recording Day 同上、一回に12人までしかできないため、2日かける。その日に録画がない学生は教室で独創的な学園ドラマ的スキットを書いて演出するClassroom Taskが与えられる。


  8. Improvement Goals / Practice Methods: この授業にVideoに基づいた自己分析の内容を持参し、クラスメートと話し合う。意識したい上達目標は何?そのための練習方法は?という感じで話し合い、アイデアをまとめて報告する。講師はそれを聞いて更に具体的な練習方法や参考資料を提案する。ここでSelf-Assessment Formの提出があり、講師が個人的なアドバイスを書いて次週に返却する。

  9. Getting Help/Asking for advice/Making an appointment/Visiting a Professor: スキルとして教授・講師・クラスメートにどうやって助けを求めるか・相談をお願いするか、そのスキルの重要性を考え、表現を練習し、ロールプレイで練習。

  10. Summarizing/Reporting on a Discussion:会議の最後に話し合った内容をどうまとめ、報告するかを練習。例を勉強して表現を練習した後、mini-meetingsを行って話し合った結果の報告の練習をする。

  11. Presentation and Discussion Practice(通称P&D):ELPの伝統的授業方でより本格的なDiscussionの練習。4人のグループをつくり、一人15分の持ち時間で60分話し合いを続ける。各自、3分自分が選んだ「教育問題」の分野のトピックに関して問題提起し、自分の意見を理論的に説明し、その後10分ほどそのトピックに関して他のメンバー間の議論を進行役として進め、話合ったことを最後にまとめて、講師へ一分以内に報告。最後の2分はFeedbackで、メンバーから評価のコメントが出る。もらったコメント、振り返りを書いて提出。

  12. P&D, no.2 上記と同じ。前回と同じトピックでOK。変えてもOK。目標を意識して再チャレンジ。
  13. Strategies for improving fluency - No.2の授業に似ていますが、fluencyを「交流している相手に自然で気持ちいい会話と思わせる力」と定義し、相手のペース・文化的・個人的スタイルになるべく合わせることを考える。例えば、長い沈黙を避けるなど飽きないようにつなげる方法をなどを考え、関連するフレーズを練習。"Just a moment, let me see, I can't think of the word, what was it? Well, let me put it another way, what I wanted to say is, for example, what do you call the thing you use when you......well, I can't seem to express it well, so let me get back to it later. Let's move on...or better yet, why don't you go ahead and tell us your idea first" などのsurvival filler phrasesを練習してから、spontaneous speech topicsを与え、3-2-1のメソッドでスピーチをします。最初は言葉を捜しながらFillerをたくさん使い、時間制限3分、次2分、最後に一分の制限でなるべくfillerをカットして中身のあるスピーチ。練習方法はshadowing, 音読などを紹介する。

  14. Giving Peer Feedback ー上手なFeedbackの仕方の練習。Positive comments, asking the person for self-reflection, giving suggestions with appropriate indirectnessなど。

  15. Practice for Assessment No.2 - 2回目のVideo録画に向けた練習。練習した様々な要素を組み込めているかグループでお互いにチェック。

  16. Recording Day、一回目と同じフォーマットの予定だが、3人で3つのトピックを5分づつ短い時間で浅く話すよりも、今度は掘り下げて議論する力を見るために一つのトピックで15分間ぐらいのDiscussionにするかも知れない。

  17. Recording Day、同上。

  18. Final Discussion on Speaking Goals, Reflections, and Future Practice Methods。夏の間の練習方法も重要。練習方法やリソースのアイデアをASPのMoodleサイトにたくさん紹介したい。
コースの評価基準は今のところ:
Class participation: 30%
Phrase quizzes, skits, and other tasks:20%
Self/Peer Analysis of recorded assessments: 40% (Record, watch video, get comments from peers, self-evaluate based on criteria, set goals and practice methods, 20% for each cycle)
Teacher evaluation of recorded assessment No.2: 10% (まだ表ができてませんが、ファシリテーターとしてやるべき機能をできたかどうかについて加点方式。本人の自己評価を確認する形で10点満点から講師がつける予定。)

とELPで規定されているが、その具体的な内容は私が柔軟に決めることができる。例えばPhrase quizzes/skitsの代わりにReflection JournalかSpeaking e-portfolioをやりたいなと思っている。Reflection Journalは授業の終わりに何分間か書いてもらえばいいかな、と思っているが、Speakingのクラスなので、できればReflectionは「話す」方法でやって欲しい。しかし、学内には学生が宿題として自由に録音ができる部屋がまだできていない。。。(4月中にできるらしい)。それから携帯を使ってもらう手も考えたい。授業外で話し、録音か録画ができれば表現の練習や応用が主題として出せ、YouTubeのstreamingをあわせてブログにUpさせれば一種のe-portfolioとなる。果たしてできるか?ただ、パソコンが苦手な学生には苦痛の可能性がある。

以上、手探りな部分が多いですが、とりえあえずここまで書きます。アイデア・質問・コメント、何かあれば是非教えてください!


Sample: This is one student's 2nd recording from a pilot I did in 2008 ASP. Last year we did solo recordings, but in 2009, we want students to record in groups to show their interactive skills more, and also to give the teacher time to observe rather than react to the discussion.

1 件のコメント:

  1. OBの者です。ELP teacherの熱意は学生時代からひしひしと感じていました、毎回のクラスに苦労しましたが実力もつき、感謝の気持ちでいっぱいです。
    応援しています。
    よろしければ私のブログもご覧ください。
    http://blogs.yahoo.co.jp/wittgenstein0611

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